ASUSTeK Computerの「ZENBOOK Prime」シリーズは、他社に先駆けて、フルHD(1920×1080ドット)対応の13.3型/11.6型ワイド液晶ディスプレイを Ultrabookに搭載した先進性が光る製品だ。しかも、広視野角で高輝度、発色もよい高品位なIPS方式の液晶パネルを採用しているのは見逃せない。

 特に11.6型モデルの「ZENBOOK Prime UX21A( Toshiba Satellite A100 アダプタ )」は、190ppi(pixel per inch:1インチあたりのピクセル数)という高画素密度を実現しており、数あるUltrabookの中でも最もRetinaディスプレイに近い高精細表 示が味わえる。

先に掲載したレビュー前編で は、この魅力的な液晶ディスプレイを中心に、ボディデザイン、バッテリーやACアダプタの仕様、キーボードやタッチパッドの使い勝手をチェックした。今回 のレビュー後編では、基本スペックをおさらいしたうえで、パフォーマンスやバッテリー駆動時間、動作時の発熱、騒音をテストしていこう。

基本システムは、2012年夏モデルとして登場した他社のUltrabookと同様、Ivy Bridge(開発コード名)こと第3世代Coreプロセッサー・ファミリーの超低電圧版CPUを中心とした、Chief River(開発コード名)プラットフォームを採用している。

toshiba pa3356u-1bas バッテリー  CPUには2コア/4スレッド対応のCore i7-3517U(1.9GHz/最大3.0GHz)を搭載。13.3型モデルの「 Toshiba Satellite A105バッテリー )」をはじめ、他社のUltrabookでも採用例の多いCPUだ。

 チップセットはIntel HM76 Express、グラフィックス機能はCPUに統合されたIntel HD Graphics 4000を利用する。メモリ容量は4Gバイトだ。増設不可で8Gバイトを選択できないのは少々惜しいが、従来のPC3-10600よりも高速な PC3-12800 SO-DIMM(DDR3-1600)のデュアルチャンネルアクセスに対応しており、Ivy Bridgeのメモリコントローラ本来の性能をフルに引き出している。

 データストレージはSerial ATA 6Gbps対応のSSDを内蔵し、容量は約256Gバイトと余裕がある。今回入手したZENBOOK Prime UX21AのSSDを確認したところ、「 Toshiba Satellite M55ACアダプタ 」だった。これはZENBOOK Prime UX31Aが搭載していたSSDと同じものだ。このSSDの公称スペックは、シーケンシャルリードが最大450Mバイト/秒、シーケンシャルライトが最大 350Mバイト/秒、ランダムアクセスのIOPS(Input Output Per Second)が1200IOPSとなっている。

本体装備の端子類は、厚みのある両側面の後方に集中している。左右に1基ずつUSB 3.0(右側面は電源オフ時の給電対応)を配置するほか、アナログRGB出力(Mini-VGA)、Micro HDMI出力(Type D)、マイク/ヘッドフォン共用端子を搭載し、Mini-VGA接続のD-Sub 15ピン変換アダプタとUSB接続の有線LANアダプタ(100BASE-TX)が標準で付属する。

 ボディサイズが一回り大きいZENBOOK Prime UX31Aと異なり、SDメモリーカードスロットを省いているのは従来通りだ。ボディの薄型軽量を重視し、本体内蔵の端子類は最小限にとどめている。

 液晶ディスプレイ上部には92万画素のWebカメラとデジタルマイクを内蔵。底面のステレオスピーカーに加えて、Bang & Olufsen ICEPowerとの共同開発によるオーディオシステム「  PA3399U-1BAS 」も搭載し、薄型軽量ボディとしてはしっかりしたサウンドが楽しめる。

 通信機能は100BASE-TX/10BASE-Tの有線LAN(付属のUSB変換アダプタが必要)、IEEE802.11a/b/g/nの無線LAN、そしてBluetooth 4.0を標準で内蔵している。従来同様、WiMAXやワイヤレスWANは搭載していない。

こからは各種ベンチマークテストの結果を追っていこう。比較用として、下位モデルにあたるノーマルのZENBOOK UX21A(UX21A-K3128)を用意した。また、先代機となる「 PABAS057 )」の結果も併記したので参考にしてほしい。

 3機種の主なスペックは下表にまとめた。新世代のZENBOOKでは、CPU、メモリのほかにも、無線LANが5GHz/2.4GHzのデュアル バンド対応(Intel Centrino Advanced-N6235)となったほか、USBポートが左右側面ともUSB 3.0対応したことや、Webカメラが高画素化している点、キーボードのバックライト内蔵など、13.3型のZENBOOK Prime UX31Aと同様に強化されている。

 ノーマルの「ZENBOOK UX21A(UX21A-K3128)」との違いは、液晶ティプレイとSSDのみだ。今回入手したZENBOOK新モデルに搭載されていたSSDは、 ZENBOOK Prime UX21AがSanDiskのU100、ノーマルのZENBOOK UX21AがA-DATAのXM11で、それぞれ13.3型モデルと同じものが使われていた。

パフォーマンステストの結果は、PCMark 7とPCMark Vantage x64において、下位モデルにあたるZENBOOK UX21Aのほうがスコアがよかった。これは搭載するSSDの違いによるものだろう。ZENBOOK Prime UX21Aの256GバイトSSD(SanDisk U100)より、ZENBOOK UX21Aの128GバイトSSD(A-DATA XM11)はトータルの性能で優れているのだ。

 Windowsエクスペリエンスインデックスにおけるプライマリハードディスクのサブスコアや、PCMark 7のSystem Storage Score、PCMark VantageのHDD Score、いずれもXM11のほうが明らかに高いスコアが出ている。 Toshiba PA3399U-2BASバッテリー

 とはいえ、OSの起動や復帰などのレスポンス面で大きな差が体できるかというと、そうでもなく、どちらも軽快だ。参考までにWindows 7の起動時間を計測してみたところ、ZENBOOK Prime UX21A、ZENBOOK UX21Aともに26.2秒だった(電源ボタンを押してから、タスクバーに全表示設定でアイコンがそろうまで。3回テストした平均値)。

SSD自体の性能をより詳しく調べるため、CrystalDiskMark 3.0.1も実行した。ただし、ZENBOOK UX21Aが内蔵していたSSDのA-DATA XM11は、SandForceのコントローラ「SF-2281」を搭載しており、高速化や長寿命化のためにデータを圧縮して転送する仕組みを採用してい るので、圧縮ができない、あるいは圧縮効果の少ないデータの転送は遅くなる。データ圧縮の有効度によって性能が変わることから、今回は標準設定の Random(圧縮が効かないランダムデータ)のほか、0fillデータ(データにすべて0を利用)でもテストを行なった。 Toshiba PA3399U-2BRS

 テスト結果については、ZENBOOK Prime UX21Aが搭載するSanDisk U100のシーケンシャルリード/ライトが速い一方、ランダムアクセス、特にランダムライトが遅いスコアとなった。これがZENBOOK UX21Aに対して、ベンチマークテストのスコアで見劣る原因になっている。

 CrystalDiskMarkのRandom設定は圧縮が効かないため、ZENBOOK UX21が搭載するA-DATA XM-11では、シーケンシャルリード/ライトで大きくスコアが落ちてしまう。ユーザーが普通に使う際には0fillのような処理をすることはまずないも のの、PCMarkなどのスコアからしても、まったく圧縮が効かないRandom設定のスコアもまた真の実力を反映しているわけではない。

 すでに圧縮されている画像や動画(特に大きなサイズ)のコピーなどではRandom設定のテスト結果、日常的なOS、アプリケーション操作では0fill設定のテスト結果のイメージに近い性能が期待できるといえる。

なお、これと同様のSSDによる逆転現象は先代機にあたる13.3型のZENBOOK UX31A( Toshiba Satellite A80バッテリー )と11.6型のZENBOOK UX21E(UX21E-KX128)との関係、また13.3型のZENBOOK Prime UX31A(UX31A-R4256)とノーマルZENBOOK UX31A(UX31A-R5128)の関係でも見られたことだ。同じモデルのPCでもSSDの容量によって性能が違うことはよくあるため、ある程度は仕 方がない。

 ZENBOOK Prime、ノーマルのZENBOOKともに、基本スペックは13.3型モデルと共通なだけにだいたい似たようなスコアで、メモリのデュアルチャンネルアクセスにも対応しているだけあって、第2世代Ultrabookとしては十分な性能を持っている。

 ただし、3D描画系テストは13.3型のZENBOOK Prime UX31Aに対してスコアが見劣る傾向だった。Intel HD Graphics 4000はGPUコアのクロックをTurbo Boost 2.0によって変動させることから、おそらくこれが関係していると思われる。